午後の困惑

(日本語メモ帖)


以前から困っている日本語の問題があります。それは、
“午前の「おはよう」に相当する、午後の挨拶の言葉がない”という問題です。


「こんにちは」があるじゃないか、と思いますか? 本当にそうでしょうか。


朝、あなたが勤める職場に(学校でも、自宅のリビングでもOKですが)、定刻出勤した場面を想像してください。
あなたは、同僚や部下に対して「おはよう」(A1)と言います。
先輩や上司には「おはようございます」(A2)です。
たまたま訪れた仕入れ先の社長にも「おはようございます」(A3)と言うでしょう。


では、午前中に私用を済ませて、午後1時過ぎに出勤した場面はどうでしょう。
同僚や部下に「こんにちは」(B1)と言うでしょうか。
先輩・上司にも「こんにちは」(B2)とは言わない。
ただし、仕入れ先の社長にだけは、「こんにちは」(B3)が使えます。


(B1)(B2)の場面の、適切な挨拶の言葉がないのです。


ある日あなたが、上司や同僚から「こんにちは」と挨拶されたとしたら、
あるいは、配偶者や両親から「こんにちは」と言われるようになったら、
あなたは極めて深刻な問題に直面していると考えて差し支えありません。


やむを得ず、午後でも「おはよう」を使う人は多い(私も、つい使ってしまいます)。
日本語を勉強中の外国人からはビックリされますが、
「こんにちは」を使う違和感よりもマシなのだから仕方がありません。
「おそよー」といったスラングが使える場面もあるにはあります。
しかし大半は「お疲れ様です」のような裏技でしのいでいるのではないでしょうか。


頻繁に会う相手(家族・級友・同僚など)と、午後に交わす挨拶の言葉がない。
これは現代日本語の欠陥のひとつです。
皆さんは困っていませんか? どのようにしのいでいますか?


名古屋のブランディングデザイン制作会社「リンコムアソシエーツ」
shoji

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